2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)に向けて、自動車用だった「水素エンジン」を鉄道にも使う。そんな試みに、JR東海が挑んでいる。実現すれば、世界初になるという。ほかに先行して開発が進む環境技術があるなかで、なぜ難路を行くのか。
名古屋駅から車で高速道路を使って1時間弱。人里から離れた森の奥に、JR東海の研究施設(愛知県小牧市)がある。この一角で、水素を活用した環境技術の開発が進む。
「加速します」「ノッチオフ」――。研究員がモニターの数値を確認しながら、同僚に声をかける。視線の先にあるのは、遠隔操作する巨大な試験装置だ。鉄道車両の車輪をレールを模した特殊な設備の上で回転させ、さまざまな走行パターンを再現している。
車輪の動力源は、水素を取りこんで二酸化炭素(CO2)を出さずに電気を生む「燃料電池」だ。性能を調べて、鉄道車両に使えるのか見極めようとしている。この試験の対象に、水素を燃やして動かすエンジンを今年度中にも加える。
どちらも実際に現場で使われ…